なぜ猫は慢性腎不全になりやすいの?
猫は他の動物に比べて「慢性腎不全」になりやすい動物です。
理由は諸説あるのですが一説では、猫は尿道が細いうえにオシッコの量や回数が少ないので、「尿石症」や「尿路閉塞症」にもなりやすく、排出出来なくなったオシッコが逆流することにより腎臓にダメージを与えて腎臓の機能が低下するからと言われています。
今回は、早期発見の難しい病気である「慢性腎不全」の症状と予防法や治療法をまとめてみました。
慢性腎不全ってどんな病気?
腎臓は、血液をろ過することにより不必要な老廃物や毒素を尿として体外へ排出するという役割を持っています。
しかし、腎臓の働きが低下すると尿が出にくくなり、体内に老廃物や毒素が蓄積してしまいます。
このような状態が長期間続き治らないのが「慢性腎不全」と呼ばれる病気です。
慢性腎不全の症状は?
「慢性心不全」の初期?中期は、はっきりとした症状が現れにくいので見落としがちです。
病気の進行状況により下記の様な症状がありますので、愛猫の様子と照らし合わせて見て下さい。
初期(腎臓のダメージ50%未満)
- 表立った症状は無し
- 稀に、便秘がちになる場合があります
中期(腎臓のダメージ75%未満)
- 水をたくさん飲むようになる
- オシッコの量や回数が増える
- 便秘がちになる
- 血液検査をすると貧血が見られる場合があります
後期(腎臓のダメージ75%以上)
- 水をたくさん飲む
- オシッコの量や回数が多い
- 便秘になる
- 食欲が落ちる
- 嘔吐するようになる
- 血液検査で腎臓関係の数値が高くなる
末期(腎臓がほぼ機能しなくなる)
- 食欲が無くなる
- ぐったりして、眠っている時間が増える
- 下痢をする
- 嘔吐をする
- 痙攣などの神経症状がでる
- 尿毒症の症状がでる
慢性腎不全になりやすい猫は?
一般的に「慢性腎不全」はシニア猫(8歳齢?)がなりやすいと言われていますが、下記の病気を経験した猫はリスクが高いことが分かっています。
- 膀胱炎
- 尿石症
- 尿路閉塞症
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫伝染性腹膜炎
- トキソプラズマ症
その他にも体質遺伝も多いので、親猫が「慢性腎不全」を患ったことがあるなら注意が必要です。
慢性腎不全の予防法
「慢性腎不全」を予防するには、日々の積み重ねが大切です。
愛猫が若いうちから、下記の事に気をつけると予防につながります。
水をたくさん飲ませる
身体が脱水ぎみになると、腎臓の負担が増加してしまいます。
そうならないためにも、十分に水分を摂ってもらいましょう。
水と器を清潔に保つ
水や器に雑菌などが繁殖すると、水と一緒に体内に取り込まれて腎臓に負担がかかってしまいます。
水の器は洗剤を使って毎日洗い、水は1日に2?3回交換してあげて下さい。
ストレスを溜めないようにする
猫はストレスの影響を受けやすい動物です。
ストレスにより免疫力が低下して様々病気になる事が多いので、身の回りの環境に注意してあげて下さい。
慢性腎不全の治療法
一度失った腎臓の機能を元に戻す事は非常に困難です。
ですので、腎臓の負担を減らし、残っている機能を有効的に使えるようにすることが治療につながります。
重度の場合は、腹膜透析や免疫抑制剤の投与などを行います。
療法食
リン・マグネシウム・ナトリウムの摂取量を抑えることにより、腎臓への負担を減ると考えられています。
以前までは、たんぱく質の含有量も抑えた方が良いとされていましたが、猫の年齢や状態によっては逆効果になる事が分かってきました。
猫の食欲も関係してきますので、療法食を選ぶ際には獣医さんの相談する事をおススメします。
投薬やサプリメント
体内の老廃物や毒素を吸着することによって、ウンチとして体外に排出させる効果のある薬やサプリメントが開発されています。
猫の症状や体重により必要な量が変わってきますので、獣医さんに処方してもらいましょう。
点滴
猫の脱水を緩和するために、皮膚の下に水分を注入する「皮下輸液」を行います。
猫は首や背中に点滴をすると皮下に輸液を溜める事が出来るので、人のように長時間安静にする必要はありません。
点滴の時間も量にはよりますが、約10分程度が終了します。
点滴の回数については、猫の症状により数日置き?毎日まで、さまざまです。
経口補水液
こちらも脱水を緩和するために行う治療の一つです。
経口補水液は体内に吸収されやすいので効率的に水分を摂取する事が出来ますし、身体が弱っていても摂取しやすいようです。
慢性腎不全の症状・予防・治療法ーまとめ
「慢性腎不全は後期症状が出る事で気付く」という事がほとんどです。
しかし、一度失った腎臓の機能はほとんど回復する事がありませんので早期発見が非常に大切です。
「慢性腎不全」を早期発見するためには「尿検査」「血液検査」がとても有効です。
尿検査で調べる事が出来る「尿比重」や血液検査で調べることが出来る「クレアチニン」「BUN(血中尿素窒素)」の数値で「慢性腎不全」を見つける事が出来ます。
他にもレントゲン検査やエコー検査によって、腎臓の形や大きさの異常で見つかる事もあります。
検査以外にも、日頃の様子から早期発見出来る事があるので、下記の事に注意してあげて下さい。
- 水を飲む量が増えていないか
- 食欲が落ちていないか
- オシッコの量が増えていないか
- ウンチの回数が減っていないか
しかし、正確な状況を知るには愛猫の普段の状況が分かっていなければなりませんので、日頃から愛猫の様子をつぶさに観察しておきましょう。
「慢性腎不全」は徐々に症状が重くなる事が多いのですが、特徴のよく似た「急性腎不全」という病気もあります。
「急性腎不全」は「慢性腎不全」の末期症状がある日突然現れ、放っておくと数日で命を落としてしまう事も少なくありません。
それに、「急性腎不全」は猫の年齢に関係なく、若い猫が突然発症することも多いので知っておいて下さい。
猫は体調が悪くてもあなたに話す事は出来ません。
なので、日頃から愛猫の様子に気を付け、体調不良に気付いてあげて下さい。
そのためにも、猫のかかりやすい病気を知っておく事が大切です。