人獣共通感染症とは
人獣共通感染症とは、犬や猫などの動物と人の間でうつる病気のことです。
人獣共通感染症の中で有名なものに「狂犬病」がありますが、「狂犬病」以外にも動物から人にうつる病気はたくさんあるんです。
もちろん、猫から人にうつる病気もあります。
しかし、「感染経路」「病気の症状」「予防法」を知っていれば、それほど怖くない病気も多いのでこの機会に知っておいて下さい。
猫から感染しやすい人獣共通感染症
猫から飼い主や家族にうつりやすい人獣共通感染症をご紹介します。
正しい知識さえあればそれほど怖い病気ではありませんので、必要以上に警戒する必要はありません。
猫ひっかき病
猫から人にうつる病気の中で一番受診者が多い人獣共通感染症です。
猫にひっかかれる以外の経路でも感染する事もあります。
- 感染経路(猫にひっかかれる、ノミに刺される)
病原体であるパルトネラ菌に感染することにより発症します。
パルトネラ菌に感染したノミが猫の血を吸い、他の猫にうつすことで広がります。
パルトネラ菌に感染した猫にひっかかれたり噛まれたりすることで人に感染します。
稀に、パルトネラ菌を保有するノミに刺されることでも感染することがあります。 - 症状
猫はパルトネラ菌に感染しても症状が出る事はありません。
しかし、人がパルトネラ菌に感染すると、感染した3?10日位後に傷の部分が赤く腫れて虫さされのようになり、その数日?2週間後に発熱やリンパ節が腫れて痛むことがあります。
重症の場合はリンパ節の手術や入院が必要になりますが、健康な人の場合は治療を行わなくても自然に治癒する事がほとんどです。 - 予防法
ノミがパルトネラ菌の媒介をするので、猫にノミ予防をすることで感染予防が出来ます。
その他にも、猫にひっかかれたり噛まれた場合、直ぐに傷口の洗浄と消毒をすることで予防出来ます。
ノミ刺咬症(のみしこうしょう)
猫などに寄生したノミに人が刺されることにより感染する病気です。
なので、猫などを飼っていなくても外にいるノミに噛まれて感染することもあります。
- 感染経路(猫からノミをもらう、ノミに刺される)
ノミに寄生された猫を触る事やノミが住み着いたカーペットや服などに触れる事で、ノミが人に寄生し刺される事で感染します。 - 症状
ノミに刺されると人も猫も激しいかゆみを感じます。
人の場合は、柔らかい二の腕やふくらはぎなどを刺される事が多く、刺された箇所に直径1?位の紅斑が出来ます。
重症の場合は、腫れがひどくなったり水疱が出来る事もあります。 - 予防法
猫がノミに寄生されている場合は、ノミの駆除を行う事で予防出来ます。
住居内のカーペットやソファなどの布製品にノミが住み着いている場合もありますので、掃除機などで掃除を行い室内を清潔に保つことも予防になります。
パスツレラ症
感染後に症状が出るまでの期間が短い事が特徴です。
猫に噛まれるなどした後、短時間で患部が腫れた場合は直ぐに病院で診察してもらいましょう。
- 感染経路(猫に噛まれる・ひっかかれる・なめられる)
病原体であるパスツレラ菌は、90%の猫が保有しています。
人に傷がある場合は、その傷を猫になめられても感染する事があります。 - 症状
猫はパスツレラ菌を保有していても症状はありません。
感染すると、48時間以内に感染部が赤く腫れて痛みや発熱を伴います。
糖尿病や呼吸器疾患を持つ人が感染した場合は、重症化する恐れがあるので注意が必要です。 - 予防法
猫に噛まれたりなどした場合、直ぐに傷口の洗浄と消毒をすることで予防出来ます。
パスツレラ菌には抗生剤が良く効くので、症状が出ても病院で治療する事で早く治す事が可能です。
皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)
皮膚がカビるという症状が特徴の感染病です。
- 感染経路(猫と肌が直接触れる)
皮膚糸状菌という病原体に感染することにより発症します。
皮膚糸状菌を持った猫を抱っこしたり撫でたりなどして、猫と人の肌が直接触れる事で感染します。
健康な人には簡単に感染しませんが、免疫力の低下などで身体が弱っている場合は感染しやすくなります。 - 症状
身体の柔らかい部分(お腹、ふともも、二の腕など)に円形の紅斑が出来てかゆみを感じます。
猫が感染した場合は、皮膚の紅斑やかゆみの他にも脱毛する事があります。 - 予防法
皮膚糸状菌はカビの一種のため湿気を好むので、室内を清潔に保ち除湿することで予防出来ます。
猫との過度のスキンシップを控えたり、猫に触れた部分を直ぐに洗う事も予防法の一つです。
稀に感染する人獣共通感染症
健康な成人が感染する事は稀ですが、抵抗力の弱い幼児やお年寄りなどにとっては注意しておきたい人獣共通感染症もあります。
トキソプラズマ症
- 感染経路
猫がねずみや生肉を食べる事で病原体であるトキソプラズマ原虫に感染し、その猫の便から人に経口感染します。 - 症状
風邪のような症状があり、だるさや発熱、リンパの腫れ、筋肉痛が起こります。
トキソプラズマ症の大きな特徴で、妊娠中に初感染すると流産や死産の原因になることがあるので、「妊婦は猫を飼わない方が良い」と言われる由縁になっているようです。 - 予防法
完全室内飼いの猫はねずみや生肉を食べる事も少ないので、現在は感染している猫が激減しています。
感染した猫の便にトキソプラズマ原虫の卵が含まれるので、猫のトイレを清潔にする事で感染を予防出来ます。
疥癬症(かいせんしょう)
- 感染経路
猫に寄生するヒゼンダニに刺される事により発症します。 - 症状
刺された部分に強いかゆみと皮膚炎が現れます。 - 予防法
野良猫から感染することが多い病気なので、野良猫に触れないようにしましょう。
猫のヒゼンダニ駆除を行うことにより予防出来ます。
瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)
- 感染経路
ノミやシラミが持っている瓜実条虫が病原体です。
ノミやシラミを潰すと瓜実条虫が手に着くので、その手を通して体内に入り感染します。 - 症状
健康な人や猫が感染しても、ほとんどが無症状で終わります。
抵抗力の弱い幼児やお年寄りなどが感染した場合は、腹痛や下痢などの症状が出る事があります。 - 予防法
ノミやシラミを潰さない事が予防になります。
ノミやシラミに寄生された猫を触った後は直ぐに手を洗いましょう。
犬・猫回虫幼虫移行症
- 感染経路
回虫に感染した犬や猫の便に含まれる回虫の卵を体内に取り入れる事で感染します。 - 症状
腹痛や発熱、咳などの症状が現れます。 - 予防法
犬や猫の便に触れた後に経口感染するので、手洗いをすることで予防出来ます。
Q熱(コクシエラ症)
- 感染経路
コクシエラ菌に感染した犬や猫の糞尿に菌が含まれており、空気感染します。 - 症状
風邪に似た症状で、発熱や頭痛、筋肉痛、倦怠感などがあります。
慢性化してしまうと命を落とす事もあります。 - 予防法
予防をする事は難しいのですが、有効な抗菌薬が開発されているので、投薬により治療出来ます。
原因不明の発熱や頭痛などが続く場合は、早めに病院で受診しましょう。
猫から人にうつる病気の症状と予防法ーまとめ
現在は少なくなりましたが、発症すると死に至る人獣共通感染症で知られている「狂犬病」も潜伏期間(1?3ヶ月)にワクチン注射を行う事で発症を防ぐ事が出来ます。
この様に、「感染経路」「病気の症状」「予防法」を知っていれば早期発見早期治療が出来るので、必要以上に人獣共通感染症を恐れる必要はありません。
ですので、この機会に人獣共通感染症の事をよく知り、頭の隅に残しておいて下さい。
今後も、素晴らしい「猫暮し」をお過ごし下さい(*’ω’*)