愛猫の日頃の行動を見ていて、特に何も変わったことがないのに突然部屋中を走り回ったり、過度なグルーミング(毛づくろい)によって被毛が剥げてしまう、なんてことに心当たりはありませんか?
このような行動は「神経質な性格の猫」に多いと言われていますが、あまりにも頻繁に起こるようなら、この病気を疑うべきかもしれません。
今回は、複数の猫を飼った経験がある人でも気付きにくい、猫の知覚過敏症(FHS)の「症状」や「原因」「治療法」についてまとめてみました。
猫の知覚過敏症の症状とは?
「知覚過敏」と聞くと、「冷たい水を飲んだら歯がしみる」などの神経の過剰反応をイメージされる方が多いかもしれませんが、
「猫の知覚過敏症」の症状はそれとは違い、普通では考えられないような「異常な行動」を見せるようになるのが大きな特徴です。
とは言っても、常に「異常な行動」を見せるわけではなく、猫によっては年に数回程度しか症状が出ない場合もあるため、
常に一緒に過ごしている飼い主さんでも病気と気付かないことも多く、「また、あんなことやってるわ・・」と、見逃しているケースも多いと言われています。
では、猫の知覚過敏症によって現れる、「異常な行動」の主な例を「症状の重さ別」に見てみましょう。
【軽度の症状】
- 背中などの皮膚が波打つように動く
- 触られるのを嫌がる
- 過度なグルーミングにより脱毛する
- 瞳孔が開き一点を凝視するように見つめる
【中度の症状】
- 突然部屋中を走り回る
- 何もしていないのに急に暴れだす
- 理由もなく鳴き続ける
- 興奮しだすと収まらない
- 身体の一部分が痙攣する
- 狭い場所に入り込んで長時間出てこない
【重度の症状】
- 理由もなく突然襲いかかる
- 長時間威嚇し続ける
- 自傷行為により自分を傷つける
猫の知覚過敏症の原因
このような症状が現れることの多い「猫の知覚過敏症」ですが、
中には精密検査によって、「神経疾患」や「筋肉障害」「感染症」などの他の病気が見つかるケースもあります。
しかし、他の病気が見つかるのは稀なケースで、病気の原因がはっきりしないことの方が多いようです。
一説には、「過度のストレス」や「環境の変化」などが関係していると言われており、「音」や「匂い」などが引き金となり、「異常な行動」を起こしてしまうと考えられています。
さらに、「アビシニアン」や「ソマリ」「バーミーズ」「シャム」といった描種に「猫の知覚過敏症」の症状が多く見られるため、先天性の疾患である可能性が高く、
「ミックス(雑種)」でも祖先に上記の描種がいる場合は、病気の発生率が高まるようです。
猫の知覚過敏症の治療法
猫の知覚過敏症は、病気の原因が完全に解明されていないので、現状では画期的な治療方法が存在していません。
そのため、症状の「種類」や「重症度」に合わせた対処療法が主な治療方法となっています。
症状が軽度の場合は、猫のストレスを取り除いてあげたり、身の回りの環境を改善することで症状がやわらぐことも多いのですが、
症状が重くなるにつれて、抗うつ剤などの投与による治療が必要となります。
それと、この病気で注意したいのが、他の病気が原因で猫が「異常な行動」を起こしていることに気付かずに「猫の知覚過敏症」と診断されてしまうことです。
誤診されてしまっては、せっかくの治療が無駄になるだけでなく、不要なストレスを猫に与えることになってしまいます。
猫の知覚過敏症の症状に心当たりがあるなら・・ーまとめ
日頃の愛猫の行動の中で、「思い当たるふし」はありませんでしたか?
猫は「性格」や「性質」「描種」などの個体差が大きいため、病気だと気付かずに過ごしてしまい、「気付いた頃には重症化していた・・」なんてことも少なくないんです。
もし、愛猫の行動に不振な点があり、以前の行動と大きな変化があるようなら、獣医さんに相談した方がいいかもしれません。
そこで、動物病院での診察の際に大切なのが、できるだけ飼い主の主観を捨て、事実をありのままに伝えることです。
と言うのも、このような一時的に症状が現れる病気は、愛猫を動物病院に連れて行く頃には症状が治まっていることがほとんどなので、診断材料として「飼い主に対しての問診」に頼るところが大きくなってしまいます。
さらに、獣医さんの前では怯えてしまったり、攻撃的になってしまう猫もいるので、動物病院での行動が病気の症状によるものか、それとも単に興奮しているからなのか見分けづらい、というのも病気の特定を困難にさせる一因のようです。
そこで、愛猫を動物病院に連れて行く前にしておきたいのが下記のような準備です。
- 愛猫が異常な行動をしている状態を動画で撮影する
- 異常な行動を取った「日時」や「症状」をメモしておく
- 症状の出やすい「外的要因」や「シチュエーション」に注意して観察する
- 「家族」や「他のペット」との関係性を確認しておく
このように、主観に頼らない判断材料がたくさんあると、獣医さんも病気の特定がしやすいので、愛猫にかかるストレスを最小限に抑えることができます。
それに、もし特定の病気が見つからないという理由で「猫の知覚過敏症」という診断をされてしまっては、症状の改善どころではなくなってしまうので、愛猫の症状を的確に伝えることが非常に大切です。
飼い主の的確な対応が誤診を防ぎ、治療法を見つける近道となることも多いので、病状が進んで深刻な状態に陥る前に対処してあげたいですね。